君だけの星を探して

一途なオタクの現場備忘録

2023-05-27 BACKBEAT

《観劇日・劇場》

2023-05-27(sat)

2023-05-28(sun) 東京建物 Brillia HALL

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ビートルズについても、ロックについても、全く知識のない人間が感情のままに書き込んでいます。許せ。

 

2019年の初演時の興奮をどこか心のすみっこに燻ぶらせたまま過ごしていたある日、飛び込んできた『再演』のニュースに一気に体温が上がりました。あの5人の演奏を、お芝居を浴びることが出来る!情報解禁から観劇まで、本当にあっという間でこれを書いている今も、あの5人ががむしゃらに音を奏でている様子が目に浮かびます。

ビートルズ、幻の5人目。スチュアート・サトクリフ。彼の人生を覗き見しているかのような構成が私は大好きです。戸塚さんとスチュ。戸塚さんがスチュに似てきているのか、それともスチュが戸塚さんに似ていたのか。私には二人の境界線みたいなものが最早見えなくなってしまい、少しの危うさを感じるほどです。日本に戸塚さんほど、スチュアート・サトクリフを体現するに相応しい役者が他にいるでしょうか。いないと思います。それほどお二人の相性の良さに魅了されました。

 

開幕。舞台中央に置かれた大きな額縁。その真ん中に登場するスチュ。大きなキャンパスにダイナミックに絵を描くパントマイムから始まりました。

絵具で汚れた画家の手。この手が今から何を手に入れ、手放していくのか。初演時に心を鷲掴みにされているので、既に胸がいっぱいでした。

そこにベースを持って現れるジョン。私は彼こそがスチュの”運命の人”だと、解釈しています。ジョンは無遠慮に額縁を踏み越えるのがいいよね。あの感じ大好き。私の見落としだったら申し訳ないけどスチュは額縁を最後以外は踏み越えない。その対比が好きだし、最後、シガーキスをした二人が額縁を踏み越えて歩いていくのがより印象に残ってる。

初演時から大好きな、ジョンがスチュにベースを教えるシーン。演奏されるのは「johnny B good」。スチュのベースとジョンの歌声。これだけシンプルなのに様になる。初めてベースを手にした、たどたどしい演奏も見事だと思いました。

リヴァプールからハンブルクへ。旅路がダンスで表現されてる。なんて芸達者な5人なんだろう。見惚れた。

「Be-Bop-A-Lula」スチュ、ビートルズの口癖。そして観劇した者たちの合言葉。間違ってたら申し訳ないけど、ジョンのガチ音源使ってたのではなかろうか。ここで舞台奥からじわじわ踊りながら前へ出てくる5人の湿度の高い感じ?すごく好き。

ハンブルクへ移ってから描かれている、10代だった彼らの若さ溢れる、タバコ!酒!女!なロックで熱い青春時代に羨ましさを感じてしまうほど5人がとても輝いている。

なんといってもこの舞台の大きな見どころの一つの『生演奏』は魂ごと揺さぶられる。このあと何度か出てくる、演奏の技術が劣っている…というお話の流れを阻害しかねないクオリティ。正直、この公演期間限定、劇場限定としてしまうには惜しすぎる演奏。劇場の外には持ち出せないこの儚さも、また一興なのでしょうか。ヤダムリ!音源化して!!

 

そんなこんなでハンブルクで熱い夜を過ごす彼らの虜にすっかりなってしまった頃、私とは一生分かり合えないであろう、スチュのもう一人の運命、アストリッドの登場。クラウスくん、マジどんまいやで。恋に浮かれたスチュがアストリッドに向けて歌う「Love Me Tender」。あのねっとり具合、最高だった。

初演時とはキャストが変わったアストリッド。私はどうしてもアストリッドの存在を飲み込めずにいます。

スチュに「変わらない心が嬉しい」といった彼女。大事なレコーディングを飛ばしてまでアストリッドとのデートを選んだスチュを叱った彼女。「あなたは画家よ」とスチュを諭した彼女。スチュの存在、ビートルズの存在によって一番大きく変わったのは彼女だと私は感じた。彼女の変化や台詞にどうしても整合性が見いだせず初演時から再演を経ても腑に落ちないままだった。私の中でそういった彼女の矛盾を肯定できるものにしてくれていたのは初演時のアストリッドの方だったかな。初演時ではまだ、天才や運命という不確かなものに説得力を持たせられる危うさをはらんでいたと思う。再演のアストリッドは強い。とても。スチュを任せられる人、という点にはとても納得できた。

ただ、今作の彼女にはとても”芯”みたいなものを感じて。初演でなかったわけじゃないんだけれど。レコーディング飛ばすことなんて許さないだろうし、クラウスへの義理立てもしそう。画家とビートルズの2足の草鞋を強く進めてくれそうすぎた。そういった意味では再演で解釈の差が大きく開いてしまったかな、と個人的に思った。いつか彼女の存在を、考え方を消化できる大人になれたらいいな。

 

今回一番痺れたのがJUONさん。かっっっっこよすぎませんか。なによりあの歌声…。というか声。初演時、戸塚さんに必死で気付かなかった自分を殴り飛ばしたい気分。ジョンとスチュの関係に嫉妬しているポール。スチュとジョンの距離が離れれば離れるほどに自然と音楽でジョンと強く近く結ばれていく感じが切ないのに熱くて苦しかった。ポールの弾き語りでアストリッドへの想いに溢れ踊るスチュ。あのシーン、目と耳をもう1セット準備したい。同時に脳に叩き込みたい衝動に駆られます。

初演の記憶が曖昧なところもあるけれど、ピートが脱退してリンゴが合流する流れが丁寧になっていた気がした。初演時の細かい流れは思い出せないけど、え!?そんな伝え方で離脱!?って大混乱してる間もなくリンゴがひょうきんに入場してきてしかもビートルズにめちゃくちゃにこやかに受け入れられていて、感情置いてけぼりになったことだけは心に残っていて。今回なにが違うかはっきり言えないのが悔しいんだけど、ピートはピートなりに強くやってくんだろうな、という信頼がどこかで芽生えていたので、最後のソロ演奏で覚悟を決められたというか…。きっと彼の優等生な面に不和が生まれたりしたんだろうけども、そこんとこもうちょっと説明欲しかったかな。

ジョージ。君はすごいね。辰巳くんがこの番手で舞台に立つのはこれが最後になるのではないだろうかと思わせられるお芝居と演奏でしたね。ジョージの年齢詐称がバレて強制送還されるシーン。彼が一番年下だからなのか、彼が原因で強制送還されるからなのか、両方の意味を持つのかは分からないけど、彼一人だけぱんぱんに荷物持たされてて笑っちゃった。涙を拭う時もわざわざ大量の荷物一旦地面に降ろしてぐしぐし拭うの。かわいい、あまりにも。

 

再演で一番好きなシーンは、スチュを探して海へ向かうシーン。ジョンとアストリッドが靴を手に持ち、照明で砂浜と灯台を表現し、さざ波の音が遠くに聴こえる。自分の呼吸音が邪魔になってはいけないと、なぜか息をひそめてしまう。アストリッドが「スチュー!」と大声で呼ぶ場面。大きな声を劇場で出しているはずなのに、海辺で遠くに届けているような声に聴こえる不思議体験をした。大きいのに大きくない声。上手く表現できないのが悔しい。本当に海辺で聴いているような気がした。

この海辺での時間は、ジョンとスチュにとってとても大事な時間だけど、ジョンとアストリッド、スチュとアストリッドにとってもかなり大事な時間だったように思う。ジョンとスチュの2人のやり取りに口をはさむことなく、ただ後ろにしゃんと立って聞いているアストリッド。ここでやっとスチュを任せられる人になれたのではと私は思った。

スチュとジョンの熱い抱擁と、ジョンがスチュとアストリッドを抱きしめる時間。大好きだったなぁ。この後に起こる全ての事を納得せざるを得ない。

 

スチュが絶命し、弔いに生前親しかった人たちが集まるシーン。センターで輝くスチュの作品を囲みながら、アストリッドがスチュの最期を語る。ジョンが彼の死をへらへらと茶化し気丈に振舞う。それに対しアストリッドが激昂しスチュの死に際を絶叫する中、ジョンがふとスチュの作品と向き合い感情が崩壊する瞬間は観劇した2公演とも溢れる涙をとめられなかった。これを書いている今も、思い出すと涙がこぼれ落ちそうになる。あれだけ瞬間的に客席全体が涙し始める経験は今までなかったかも。

そこら中から聞こえる鼻をすする音に、まさに私もスチュの弔いに訪れている気持ちにさせられ、ハンブルクのあのバンドセットの中に佇む5人の姿が走馬灯のように脳裏を駆け巡った。思い出が記憶の中で煌めくってこういう感じか、と。

 

リンゴが合流し4人になったビートルズの演奏を、客席の後方からゆっくり歩いてステージに向かい、椅子に腰かけ眺めるスチュ。煙草をくゆらせじっと見つめているその視線がとても印象に残っています。客席から見える横顔がとても美しかった。スチュがジョンに黒のコートを着せた後のシガーキスには、なんだか胸が苦しくなりました。喪服に見えた。

 

私にこのようなクソデカ感情を植え付けた再演も、無事に大千秋楽を迎えてくれました。素晴らしいステージをありがとう。

戸塚祥太さん。次の稽古と並行してこの熱量のお芝居を続けてくれてありがとう。最高にロックな役者さんだと思います。同じ時代に生まれることが出来て、この目でその活躍を見ることが出来て、本当に幸せです。

 

話題のブリリアホールで観劇してみて…

何かと悪評が目立つブリリアホール。実際に着席し、お芝居を観劇した感想を書き残しておこうと思う。

①3階席1列目どセンター。音響は最高。心配していた台詞が聞き取りにくい、みたいなことも一切なし。しかし、着席すると本当に見事に目線に手すり。演者がステージの前方に立つと消える。スチュが頭痛に苦しみのたうち回る場面、手すりの下からのぞき込む変態みたいになりました。あまりにひどいので幕間に座高を男性の高さくらいで再現してみると綺麗に全て見えました。なんというか、見る側への配慮が全くされていないことがよく分かりました。

②1階中列最下手。注釈付きS席で購入。舞台セットの都合上見切れが発生してしまうのは仕方のないことだし、最大限配慮されていたように実際観劇して思ったので大して気にならず。ただ!音響最悪。バンド演奏は問題なかったけど、台詞。常に薄っすら二重?くぐもって聞こえる。中耳炎にでもなったかと思う。たぶんだけど、この劇場にセンターブロック以外に真っ直ぐ音を伝える気のあるスピーカーがひとつもないと思う。どこかにぶつかってきた音が耳に届く感じだった、常に。

今後もしブリリアホールでお芝居を見る機会があったら1階席中列から後列のセンターブロックがいいな。

 

なんだかんだ、お芝居の力で120%楽しませてもらい、胸いっぱいで帰宅しました。Tシャツ欲しかったなぁ。